全英AIG女子オープン2019 渋野日向子選手の優勝を詳しく振り返ります

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この記事では、42年ぶりに日本人が海外の4大メジャーを制覇した全英AIG女子オープンの最終日の大接戦の模様を詳しく振り返ります。

ゴルフの中継を見たことがある方はわかると思いますが、選手たちはそれぞれ異なるホールをプレーしているため、まずは以下の組み合わせから確認していただく必要があります。
渋野日向子 選手の組の目線で解説しますので、他の優勝争いをする選手の様子は少し先のホールを消化している状態です。

最終日の最終3組の組み合わせ

34組 Lサラス  コ・ジンヨン(世界ランク2位)
35組 パクヒョンソン(世界ランク1位) M・プレッセル
36組 A・ブハイ 渋野日向子

最終日を迎えて、実力者たちが上位に来ていました。
世界ランキング1位と2位の選手が前の組とその前の組でプレーすることになりました。
(どれだけ伸ばしてくるのだろう)
(自分がボギーを叩いたら終わってしまうかもしれない)
などと考えるかもしれません。
後のインタビューでわかりますが、プレー中の渋野日向子 選手にそんな弱いメンタルは存在していませんでした。

Sundayバックナイン(最終日後半9H)


最終日のバックナインに入ると
L・サラス 選手(-14)
コ・ジンヨン選手(-13)
渋野日向子 選手(-13)
の3名に絞られた戦いとなりました。()内はハーフターン時のスコア

L・サラス 選手のゾーン!?(渋野選手7H〜9H)

L・サラス 選手が9番H〜11番Hまで、3連続バーディを取得します。
2組後ろでラウンドしている渋野日向子選手は、8Hでボギーを打ち、-12とし、トップと2打差となります。
優勝争いという点でいうと、他にも何選手かいましたが、ショットやパッティングの状態、流れから言ってL・サラス 選手の勢いが頭1つ抜けていました。
ほぼ全てのホールでパーオンする上に、カップに近い位置につけています。
(またバーディチャンスなのか)
と応援でやってはいけない「外すことを祈る」ことをしてしまいます。
渋野選手は7Hのロングで2onし2パットで楽にバーディをとるも、次の8H(Per3)でグリーンの奥のカラーからのアプローチがカップを大きくオーバーしてしまい、返しのパットを外しボギーとしてしまい、失速します。
渋野日向子 選手(-12)
コ・ジンヨン選手(-14)
L・サラス 選手(-15)
解説の方も「この場で優勝争いをするだけですごいことです」
と優勝の可能性が低いようなコメントも目立ち始めました。

渋野選手の語るきっかけの10H(渋野選手10H〜11H)

L・サラス 選手が12、13番Hでも、チャンスに付け続けます。
しかし惜しくもパットが入らずL・サラス 選手のスコアは-14のままとなります。
2組後ろでラウンドしている渋野日向子選手は、10Hでグリーンの奥のカラーに行きます。
パターを選択し、厳しいフックラインでしたがカップの淵からぬるりと入りバーディを奪取します。-14とし、トップと1打差となります。
次の11HはPer5でバーディが期待されたのですが、3打目の絶好のポジションの67yのフェアウェイからスピンがかかり過ぎてしまい、手前にかなりの距離を残し2パットのパーとします。
まだまだ1打差だったので期待感は高いまま進みます。
しかし、解説の方は落胆している方もいました。
渋野日向子 選手(-14)
コ・ジンヨン選手(-14)
L・サラス 選手(-15)

解説:戸張さん「このPer5(11H)で取れなかったのはちょっとね。」

渋野選手の超強気の1オン狙い(渋野選手12H)

12Hホールレイアアウト

全英女子OP ワンオン

のちのインタビューでも聞かれたのですが
同じ組のA・ブハイ(-13)選手のキャディからも
「1on狙うのか?狙うなら俺たちは刻むから先に打つよ」

というやりとりをしていました。
現地の解説の村口プロ「うーん・・・。昨日刻んでバーディを取れたホールで1onを狙うっていうのはうーん。」
樋口久子プロ「私は刻むタイプだけど、選手の個性や性格が出るホールですね。」
ラウンド後の渋野プロ「ここは狙っとかないとあとで後悔すると思って思いっきり振りました。」

私のような素人は「池に入れてしまったら」後悔するのですが、渋野プロは狙わないと後悔する。そうです。
この辺りのメンタルに普通の選手との大きな違いを感じます。
結果、グリーン手前のラフにバウンドし、見事カラーを転がりグリーンに1onします。
イーグルこそ逃しますが、ナイスタッチでバーディとし、首位と1打差とします。
L・サラス 選手は13Hでも3mにつけましたが、スライスラインを打てずパーが続いています。
コ・ジンヨン選手が13Hで1mのパットを決め、首位タイに追いつきます。

渋野日向子 選手(-15)
コ・ジンヨン選手(-16)
L・サラス 選手(-16)

渋野選手の怒涛の追い上げ(渋野選手13H〜15H)

コ・ジンヨン選手(-16)、L・サラス 選手(-16)共にショットの調子が最高によく、14HのPer3でもバーディチャンスにつけます。
L・サラス 選手は2mのパットがカップの縁をなめて入らず、両者パーとします。
渋野選手(-15)は13HのPer4で2ndを2mにつけます。
このパッティングもカップのむこうぶちに強く当てバーディとし、首位の2人に追いつきます。

渋野日向子 選手(-16)
コ・ジンヨン選手(-16)
L・サラス 選手(-16)

しかし首位のL・サラス 選手(-16)が先を行く15HPer5で、ミドルパットをねじ込み単独首位となります。 L・サラス 選手(-17)
コ・ジンヨン選手(-16)のスコアは伸ばせず変わりませんでした。
渋野選手(-16)は14HのPer3で3mのフックラインがカップの左縁を抜けて惜しくもパーとします。
L・サラス 選手(-17)とコ・ジンヨン選手(-16)も引き続き16Hでチャンスにつけます。
しかしここでも2人ともチャンスを決められずトップのスコアは-16のままです。

解説:戸張さん「L・サラス 選手と同じペースで行くなら少なくとも15Hでバーディが必要ですね」

続く15H(Per5)2打目の前に待ち時間がありますが、渋野選手(-16)お菓子を食べてカメラに笑顔で対応します。
渋野選手のキャディ兼コーチの青木さんとお菓子を分け合い、雰囲気が1人だけ柔らかいまま試合は進みます。
渋野選手(-16)のPer5の第3打は、フェアウェイ残り30yardから打ちますが、少しショートし、4mに付けます。
これをしっかりとど真ん中から決めて、首位の L・サラス 選手(-17)をついにとらえます。
このパットの前にリーダーズボードをしっかりと見て、1打差のビハインドを理解したまま決めたことが強さを物語ります。
渋野日向子 選手(-17)
L・サラス 選手(-17)
コ・ジンヨン選手(-16)

膠着状態のまま(渋野選手16H〜17H)

16,17Hでは、3選手ともチャンスにつけることはできず、パーとします。

海外のTVカメラに手を振ったり、相変わらずお菓子を食べています。
同組の選手のショットにも英語で褒めています。(同組の選手の方が緊張していてうまく返事できていませんでした)

渋野日向子 選手(-17)
L・サラス 選手(-17)
コ・ジンヨン選手(-16)

笑顔が呼んだ2つの奇跡(全選手18H)

渋野日向子 選手(-17)
L・サラス 選手(-17)
コ・ジンヨン選手(-16)
18Hのコ・ジンヨン選手はピンと同じ段につけることができず、バーディが最低条件のコ・ジンヨン選手はこのパットを外し優勝争いから脱落となります。

1つ目の奇跡

18HのL・サラス選手の本当に本当に短いバーディパットを外すと予想していたのは、樋口久子プロ(初代日本人メジャーチャンピオン)だけでした。
距離は1.5m前後です。

カップに蹴られ、パーとしました。

樋口プロ「これを入れれば優勝となるとちょっとね。ふふふ。」

解説:戸張さん「L・サラス 選手はバーディとると思ってた方がいいですね」

2つ目の奇跡

渋野日向子 選手(-17)
L・サラス 選手(-17)
渋野選手(-17)が18Hを迎えた時にボギーを打つと2位までありましたので、観戦している側としては
「何としてもパーでプレーオフに持って行ってくれ」
と願っていた人は多いと思います。
そんな中で渋野選手は4mのバーディチャンスにつけます。

のちのインタビューで渋野選手は
「ここで決めるか3パットと思ってがっつきました!」
と答えていますが、全くわかりません。
1パット→優勝
2パット→プレーオフ
3パット→2位

この状況であればジャストタッチで入るラインを選ぶ選手や人間がほとんどかと思います。
メジャーを取るというのはそういうことかもしれません。

渋野選手の凄さ

緊張しないというメンタル

ファンに対しての目線を20歳の年齢で持つことができる

ホール間の時に特に笑顔になるという精神的なスタイル

現地の優勝スピーチで宮里藍さんのご主人である通訳をできる方もいたのに、自分で英語でスピーチをしたこと

インタビューの受け答えに嘘偽りがなく、応援したくなる選手であること

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